2009年12月27日日曜日

イギリスでは医療費が無料

イギリスでは医療費が無料という事について、ぜひとも知っておいてほしい事があります。イギリスの医療制度では医療費は無料といわれています。これは、ある面で正しいかもしれませんが私にとっては金銭的な点とリスクの点で大変な負担となっています。

医者に 診て 見てもらうのは確かに無料
まず医者にかかるためにはGPと呼ばれる診療所に行かなければなりません。そこで医者に会うにはお金は必要ありません。
そこでは所見の後にアドバイスや薬の処方をおこなってくれます。ここまでは日本の町の診療所と似ています。でもそれ以上の事は行えません。医療機器はGPにはありません。

病気も患者も待て
そしてGPへは予約が必要です。朝具合が悪いからと言っても午前中に診てもらう事は殆ど期待できません。風邪で熱が出てもGPとの予約は2日後になる事も普通です。

医者は時に命を預かる
GPは自分の手に負えない場合やさらなる検査が必要な場合は適切な病院を紹介できる裁量権があります。でも患者には紹介される病院や医者は選べません。GPの決定に対して、不当な態度や行動で逆らった場合は、患者として医者に会う事を拒否されます。(GPに行くとポスターが貼ってあります。)
ここまでで結構な人数の患者が振り分けられます。毎日お医者さんに通う老人は存在できません。一週間仕事を休んで安静にしていれば直る患者もこの時点で治癒されているはずです。そうでなければ急患として既に救急車で直接病院に運ばれているかもしれません。

ベッドを空ける工夫
GPから検査のために病院を紹介され運よく悪い部分を見つけることが出来ても手術を受けるためには、場合により数ヶ月間待つ事があります。その間に命を落としてしまう事があります。あまりにもこのような事が続いたため医者に罰則を設けたらしいのですが、医者も体制が変らないのにどうすればよいのでしょう。(罰則を設けるとイギリスではベッドが空く仕組みになっているようです。そうです、患者を早く退院させてしまえばよいのです。)

薬づけを防ぐ工夫
GPや紹介された病院から薬が処方された場合、薬の種類に係わらず1種類あたり7ポンド(1500円)ほどの費用がかかります。これは個人負担です。仮に2種類の抗生物質と吐き気をとめる薬との合計3種類の薬が1週間分処方された場合は、一回当たり4500円を払う事になります。仮に領収書をためておいても、税金の年末調整の対象ではありません。
但し高齢者や子供、生活保護者、障害者には薬は無料です。

このような状況でどのように自分と家族を守るかですが、私は家族を含めて 毎月高いお金を払って、個人医療保険に入っています。この場合でもGPに行かなければいけませんが、私立の病院を選べます。またその病院も受け入れまでの待ちの期間が短いです。
私のようなサラリーマンで保険料を払える人の間では一般的なことです。

イギリスの社会医療制度は無料ですが、医療関係者が無料奉仕で働いているわけではありません。国民がお金を払っているのです。そして医療制度のレベルが日本と大きく異なるのです。

日本の医療制度の状況を知っている私にとって、このような低レベルな社会医療制度はとうてい受け入れがたいです。また日本の医療制度改革について論議する際に「イギリスでは医療費は無料ですよ」等と的外れな事を言ってほしくありません。

もっと医療費への割り当てを
もし日本もイギリスと同じような無料にしたいならば、日本の国民はイギリスの低い医療制度の現実を知った上でそれを受け入れ、かつイギリス並みの高い税金に耐えなければなりません。
例えば、
所得税として400万円を超える収入に対しては20%の所得税率を負担する事。また600万円を超える収入に対して40%の所得税率を負担する事。(上記は所得税だけ、そのほかに年金等も払うので、給料が半分近くになってしまう)
そして最低レベルの生活に必要なもの以外の買い物に対して17.5%の税金を負担する事。
上記が不安であればその上で個人医療保険への加入もおすすめします。

日本がこんな医療制度になったらとてもイヤだと思うのですが。

私はイギリスに来てから感じる事は、「教育も医療もお金次第」という悲しい現実。
高い税金を払った結果として用意された「無料のゆりかごから墓場までの社会保障」も選択可能ですがレベルが低すぎます。

救急医療や夜間休日診療については今回は触れていませんので別途書きたいと思います。まあ平日の昼間でも自由に医者に掛かれないのですから、ご想像のとおりですが。

無知を恥じなさい
このめずらしいくらいの格差社会におけるお粗末な医療制度。 日本でこの言葉を聞いた人は「イギリスは医療費が無料」との言葉の裏にある現実を知っておくべきだと思います。 またこのような発言をしている政治家は、己の無知を恥じるべきだと思います。